鳴砂の海岸を歩いて砂を踏みしめると、「キュッ、キュッ」と音がします。
「鳴き砂(なきすな)」は、地方によって「鳴り砂(なりすな)」とも呼ばれ、砂浜の砂粒を構成する透明な石英の粒がこすれ合って音を出しているのですが、その海が汚れていたり、砂浜が雨や海水で濡れていたりすると鳴きません。鳴砂の浜であるということは、その浜が清らかで美しいことを示すことから、鳴砂は優れた自然環境を教えてくれる環境指標であるとも言えます。
私たちがおこなった鳴砂の全国調査では、北は北海道から南は沖縄八重山諸島まで、30以上の鳴砂の存在が確認されました。しかしかつては、さらに多くの海岸が鳴砂であったと言われています。
次第に鳴かなくなっていく、あるいは痩せて(やせて)いく鳴砂の浜をまもるにはどうしたらよいかを調べるため、調査を始めました。その結果わかったことは、鳴砂の浜の砂が鳴き(鳴り)続けるためには、海洋汚染や浜を汚す行為を防ぎ、海を美しく保つことの他に、海岸に砂が供給されるシステムを維持・回復することと、海に戻った砂が洗われて浜にもどされる、砂の洗浄システムを維持することであることがわかりました。山から供給される砂粒を減らす砂防の仕組みや海岸道路が砂の供給システムを妨げ、消波ブロックの設置や海底地形の改変が砂の洗浄システムを失わせていたのです。
しかし、防災や海岸維持・利用の公共事業をそしすることもできません。これからも少しずつ失われていく白砂青松の海岸や鳴砂の浜を、私たちは大切に慈しみ、愛でていきたいと考えます。

【参考図書】