近年、日本の都市計画やまちづくりの中で「コンパクトシティ」という言葉をよく耳にします。富山市のコンパクトシティ政策「コンパクトなまちづくり」などが成功事例として有名です。
この「コンパクトシティ」という考え方には、米国起源のいくつかのルーツがあります。ひとつは①1960年代に土木系の学会が唱えたTOD(transit oriented development=公共交通基盤の都市開発)概念を核とするトランジット・ビレッジ(transit village)理論、二つ目は②1970年代から全米各地の大小都市で取り組まれた成長管理政策(Growth Management Policy)、そして三つ目は③1990年代から今日まで全米都市で展開しているニューアーバニズム運動(New Urbanism)です。
余り知られていませんが、20世紀初頭まで米国各都市はそれぞれに路面電車網を持ち、鉄道を基盤に発展を遂げていました。しかし政府が高速道路網による自動車交通を基盤とした国土開発に舵を切ったことで、米国は完全に車社会へと変貌を遂げ、それが環境破壊や渋滞問題などの大きな都市問題を発生させていました。この問題を解決するために、改めて軽鉄道やバスの公共交通を移動手段とし、20分以内の徒歩移動で成り立つヒューマンスケールなまち(transit village)の実現を、都市インフラの再編の視点から唱えたのが①のトランジット・ビレッジ理論です。
そして、拡大と膨張こそが発展であると信じてきた都市が、都市間競争の中で衰退し始めた1960年代後半から70年代にかけて生まれたのが、②の成長管理の思想でした。右肩上がりの都市成長を是とせず、成長を抑制(コントロール)し、景観や文化といった都市それぞれの魅力をじっくりと醸成することこそが持続可能な発展につながるとする思想です。
こうした技術と思想を画期する二つの大きな流れが、具体的な都市デザインに結実したのが、③のニューアーバニズム運動でした。成長管理に目覚めた大都市の拡大インパクトを近郊都市が受けとめるべく、都市の新開発や再編をTODに基づく公共交通ネットワークによってデザインし、そこに配置されるヒューマンスケールな都市(トランジット・ビレッジ)を個性あふれる魅力的な街路・建築デザインによって立ち上げたのが、③のニューアーバニズム運動(New Urbanism)です。
日本のさまざまな都市が「コンパクトシティ」をめざすのであれば、まずはこうした米国における都市計画に関する技術・思想・デザインを学ぶ必要があると考えます。
【推奨・参考図書】
・Michael Bernick, Robert Cervero “Transit Villages in the 21st Century”, McGraw-Hill, 1996.

・大野輝之, R.H.(レイコ・ハベ) エバンス「都市開発を考える: アメリカと日本」岩波新書新赤版 215, 1992.

・大野輝之『現代アメリカ都市計画:土地利用規制の静かな革命』学芸出版社, 1997.

・Peter Katz “The New Urbanism: Toward an Architecture of Community”, 1993.
